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階段を上る人と下る人

補償内容が変わっていないのに、保険料が値上がりすることがある?

自動車保険の多くは1年更新となっています。その間に補償を受けることがなければ、次の更新では等級(ノンフリート等級)が1つ上がり、補償内容が同じでも保険料は安くなります。ところが同じ補償にもかかわらず、保険料が値上がりすることがあります。更新のお知らせで保険料が高くなるのを見ると、何かの間違いではないかと思いたくなりますが、そのようなケースもあるのです。保険料が値上がりする場合を見てみましょう。

保険料の決まり方

自動車保険の保険料は、保険の対象となる人や自動車で細かく決められています。主に、次の要因で保険料が違ってきます。

  1. ノンフリート等級(注1)
    補償を使わなければ、1等級ずつ上昇し、保険料が安くなります。
  2. 記名被保険者の年齢
    被保険者が若い場合と高齢の場合は保険料が高くなります。
  3. 運転者の限定
    本人・配偶者限定、35歳以上限定など、運転する人を限定するほど保険料は安くなります。
  4. 型式別料率クラス(注2)
    保険の対象となる自動車の型式によって保険料が異なります。
  5. 走行距離
    1年間の走行距離が短いほど、保険料は安くなります。
  6. 割引制度
    ゴールド免許だと割引となったり、低い保険料率が適用されたりします。

保険料は保険会社によっても違いますが、その根拠となっているデータは、どの保険会社もおおむね同じです。損害保険料算定機構という組織が算出した「参考純率」という数値を使っています。それに、各社の経費などを上乗せして保険料を決めています。よって、「参考純率」の扱いで保険料は変わってきます。

(注1)20等級あり、通常は6等級から始まる。補償を使うことがなければ、20等級まで毎年1等級ずつ上がり、保険料率が下がる。
(注2)普通乗用車、小型乗用車を型式によって9クラスに分類している。もっともリスクが高い「クラス9」は、もっとも低い「クラス1」に比べて、保険料率は4.3倍となる。2020年 1月からは17段階に分けられる予定。また、軽自動車にも型式料率クラスが導入され3段階に分けられる予定。
損害保険料算定機構のサイトで、クラスを確認することができる。https://www.giroj.or.jp/ratemaking/automobile/vehicle_model/

補償内容が変わらないのに、保険料が上昇するケース

補償内容が変わらないのに保険料が上昇するのは、いくつかの理由が考えられます。

  1. 年齢による区分が変わった
    記名被保険者の年齢区分は、29歳以下、30代、40代、50代、60代以上となっていました。59歳の人が60歳になり、年齢区分が変わると保険料は上昇します。
    かつては60歳以上では区分がありませんでしたが、60歳以上も5歳ごと、あるいは「60代」と「70歳以上」に区分けされるようになりました。
    背景としては、高齢ドライバーは増加傾向にあり、また高齢になるにつれ、認知機能の低下が出てきますので、事故を起こす率の高さ、実際の事故率などを保険料率により適切に反映させるためです。その結果、年齢の上昇で年齢区分が変わった場合だけでなく、区分の変更により保険料が上昇する場合もあります。
  2. 型式別料率クラスが変わった
    損害保険料算定機構では、普通乗用車の型式によって料率のクラスを分けています。自動車の型式によって事故率が異なるからです。料率クラスは毎年見直しがされています。安全装置が装備されることで安い料率クラスになります。逆に料率クラスが高い場合でも、その自動車の安全性が劣るとは限りません。あくまで事故率で見ているため、ユーザー層の違いが影響するからです。それによってクラスの変更もありえます。
    新しく発売された型式は、排気量や似たタイプの型式を基に決めていますが、3年が経過すると実際の事故率に基づくようになります。それによって、料率クラスが上がることもあります。
  3. 前年の走行距離が多かった
    保険の対象となる自動車の走行距離によって保険料が異なる保険会社もあります。走行距離は被保険者の申告による場合と前年の実績によって決める場合があります。前年の実績による場合では、前年の状況次第で保険料が上昇します。
  4. 保険会社が支払う保険金が増えた
    事故が起きたら、保険会社は修理費を負担することになります。修理費が上昇すれば、保険会社の支払いが増えることになり、保険料も上昇します。最近は事故率の低下により保険料は下がることが多いのですが、修理費の上昇などにより上昇する可能性はあります。

先に述べましたように、多くの保険会社は、損害保険料算定機構の「参考純率」に基づいて保険料を設定しています。しかし、保険会社の経費に相当する部分の影響で保険料が値上げとなる可能性はあります。また、保険会社独自に事故率を算出して保険料を決める場合もありますので、保険会社の戦略によっても保険料は変わります。更新の際に、補償内容が変わっていないにも関わらず、保険料が値上げされるようなら、一度その理由を聞いてみましょう。すべての保険会社が同じように値上げをするわけではありませんので、その理由によっては、保険会社の見直しを検討したいものです。


村井 英一

大学卒業後、大手証券会社にて10年以上資産運用相談を受ける。独立後はFPとして、資産運用はもとより、ライフプラン、保険、住宅ローンなどを幅広く手掛ける。講演講師として全国を飛び回りながら、執筆も多数行っている。相談業務では、相談者の立場に立って、その方にあった提案を行うことをモットーとしている。


本コラムはファイナンシャルプランナーが最近の自動車保険の動向について注意すべき点をまとめたものであり、詳細は各損害保険会社のホームページやパンフレット等をご確認ください。

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