スマホによる交通事故の厳罰化について
ながら運転の反則金は現在でも普通車で6,000円
車を運転しながらスマホなどを操作する「ながら運転」については、視野が狭くなり、注意力も散漫になるために事故につながるとの危険性が問題視され、2016年にも罰則が強化されていました。
現在の法令では、自動車や原付を運転する場合には緊急やむをえない場合を除き、携帯電話などを通話のために使用することや、カーナビに表示された画像を注視しないことが定められています。これに違反して「ながら運転」をすると、罰則として5万円以下の罰金が、反則金として普通自動車では6,000円が科されます。「ながら運転」で交通の危険を生じさせた場合には、罰則として3カ月以下の懲役または5万円の罰金が、反則金として普通自動車であれば9,000円が科されます。
このような罰則があるにもかかわらず、「ながら運転」での交通事故は増加傾向でした。2018年の死亡事故率を比較すると携帯電話使用等の場合には、使用なしと比較して死亡率が約2.1倍となっています。(警察庁「携帯電話使用等に係る交通事故発生状況(平成30年中)」)
このような状況の中で、「ながら運転」の厳罰化を含む道路交通法改正案が国会に提出されました。2019年4月に参院本会議で可決(参議院先議)され、今後衆議院の採決を経て成立する見通しです。
法改正によって反則金が6,000円から18,000円に
道路交通法が改正されると、「ながら運転」に対する罰則がさらに厳しくなります。保持(携帯電話等を手に持ちながらの運転)では現在5万円以下の罰金ですが、改正案では懲役刑が設けられ、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金となります。反則金の限度額も引き上げられます。政令で定めれる実際の反則金は限度額よりも少ないため、例えば普通車では現在の6,000円が18,000円になる見込みです。
2019年7月現在 | ➡ | 改正後(予定) | ||
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罰則 | 5万円以下の罰金 | 罰則 | 6カ月以下の懲役 または10万円以下の罰金 |
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反則金 | 大型 7,000円 | 反則金 | 大型 25,000円 | |
普通 6,000円 | 普通 18,000円 | |||
二輪 6,000円 | 二輪 15,000円 | |||
原付 5,000円 | 原付 12,000円 |
「ながら運転」による交通事故は刑事罰のみになる
「ながら運転」によって事故を起こすなど「交通の危険」を生じさせた場合には、現在3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金となっている罰則が、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に引き上げられます。非反則行為として刑事罰のみとなるので、いわゆる青切符ではなく全て赤切符の対象になります。
2019年7月現在 | ➡ | 改正後(予定) | ||
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罰則 | 3カ月以下の懲役 または5万円以下の罰金 |
罰則 | 1年以下の懲役 または30万円以下の罰金 |
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反則金 | 大型 12,000円 | 反則金 | (非反則行為) | |
普通 9,000円 | ||||
二輪 7,000円 | ||||
原付 6,000円 |
このように厳罰化される一方で、自動運転車については携帯電話などの使用制限が緩和されます。自動運転から運転を引き継げる態勢を取っているなどの条件を満たす場合には、走行中に携帯電話などを使用することが認められるようになります。
CFP®
大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。企業・学校・イベント等でマネープランセミナー・講演も行う。
本コラムはファイナンシャルプランナーが最近の自動車保険の動向について注意すべき点をまとめたものであり、詳細は各損害保険会社のホームページやパンフレット等をご確認ください。