保険の基礎知識
保険で準備するのは最低限でいい!ライフステージに合わせて加入を
人生に起こり得るさまざまなリスクに備える手段として「保険」はとても有効な商品ですが、保険にばかりお金を掛けて、日常生活に使えるお金が減り豊かな暮らしが送れていないようでは本末転倒です。
保険は「必要なリスク」に対して「必要な金額だけ」掛けるのが基本です。本記事では、保険の目的とライフステージに合わせた保険の選び方について紹介します。
保険は必要最低限で良い理由
そもそも保険の目的とは
保険の本来の目的は、万が一のことが起こり大きな損害を被った場合に、自分や家族が困窮しないように備えることにあります。誰も困らない事態に対して保険を掛ける必要はありませんし、自分たちの力で対応できる被害なら無理して保険に加入する必要はありません。
また必要な保障に対して「保険料の払い過ぎ」にも注意が必要です。保険はあくまで万が一のときに備えるもの。保険料を支払うことは、その分使えるお金が少なくなることを意味します。保険は必要最低限に留め、今の生活を充実させるためにお金を使うことも大切です。
保険は3段階で考える
実はほとんどの人はすでに何らかの保険(保障)に加入しています。ひとくちに保険といっても、さまざまな種類があるので、ここでは大きく3つに分けて紹介します。
1.公的保障(社会保険)
健康保険や国民年金・厚生年金、労災保険など、公的な制度による保障です。日本に住むほとんどの人は自動的にこれらの保険に加入しています。
2.企業内保障
会社によっては公的保障以外に独自に保障を設けているところもあります。死亡退職金や遺族・遺児育英金、休業時の所得保障、医療費の付加給付金などがあります。
3.自分で準備(私的保険)
民間の生命保険会社が提供する生命保険や損害保険など、自分で準備する保険です。
さまざまなリスクすべてを民間の保険で準備しようとする必要はありません。公的保障や企業内保障で足りない金額を「民間保険」で準備するのが正しい順番です。
民間の保険に入る前に調べること
では「死亡保障」を例に、民間保険に加入する前の確認事項を紹介します。まずは公的保障と会社の福利厚生制度を調べ、それでも必要保障額に満たなかったら民間の保険を考える、という手順を踏むようにしましょう。
1.公的保障はどれくらい出るか
自分に万が一のことがあったとき、会社員の方であれば厚生年金から遺族に遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。まずはこの金額がどれくらいか調べます。
例えば、年収500万円の夫(35歳)が亡くなった時、妻(30歳)には年間約50万円の遺族厚生年金が支給されます。また、子どもがいる場合、遺族厚生年金に加え、年間78万1,700円+子の加算額(1、2人目は年額22万4,900円、3人目以降は7万5,000円)の遺族基礎年金を、子どもが18歳になるまで受け取れます。
2.企業内保障はあるか
会社の福利厚生制度を調べます。会社によっては遺族に対して、死亡退職金や弔慰金、遺族年金などを支給することがあります。これらの制度の有無とその金額を確認しましょう。
3.会社で加入できる保険はあるか
会社によっては社員が団体定期保険などに加入できます。これらのグループ保険は個人で加入するより割安なことが多いので、会社にこうした制度があれば利用を検討しましょう。
ライフステージ別、最低限必要な保険
必要な保険はライフステージによっても変化します。主なライフステージごとに必要な保険の考え方を紹介します。
独身時代
独身時代に高額な死亡保障は必要ありません。そもそも、保険は万が一のことがあった時、自分や家族の生活を守るためのもの。両親に多額の仕送りをしているなどの特別な場合を除き、自分の収入が無くなっても経済的に困る人がいなければ、保険に加入する必要はありません。
ただし、医療保険への加入は早めに考えましょう。特に貯蓄が少ない年代では、大きな病気を患うと治療費や入院代で生活が困窮するリスクがあります。また、終身タイプは若い時に加入したほうが保険料が安く抑えられることもあります。
結婚、出産
結婚から出産のライフステージでは守るべき家族が増え、保険の見直しが最も必要となるタイミングです。しかし、ここでも「自分に万が一のことがあった場合、家族を守るため」という基準で考えることが大切です。
まず、結婚すると共働きか片働きかで保険の必要額は大きく変わります。
共働きの場合、片方に万が一のことがあっても遺された家族が自分で生活できるだけの収入があれば、独身の時と同様、特に死亡保障は必要ありません。
2人分の収入を合わせて生活費を賄っている家族の場合は、それぞれの年収に応じて死亡保険に加入します。
片働きの場合、主な働き手に万が一のことがあると家族全員が経済的に困窮してしまいます。遺された家族がそれまでと同じ生活を送れる程度のお金は残せるように、死亡保険を検討しましょう。
子どもが生まれたら、教育費として一人当たり500万円から1,000万円、保険金額をプラスします。この時、新たな保険に加入するより、今加入している保険の保障を「増額」するほうが保険料を抑えられることがあります。他社の保険も含め、さまざまな方法を比較することが大切です。
40代~50代
40代から50代に差し掛かると、一般的に必要な死亡保障額は減少します。
この年代では子どもが次第に独立していくことによって、教育費や生活費が徐々に掛からなくなってきます。また、住宅を購入することが増える年代でもあり、住宅ローンと一緒に加入する団体信用生命保険などの死亡保障で、万が一のことが起きた時に必要となる生活費が軽減されることも、生命保険の必要保障額が減る要因です。
子どもの独立や住宅購入のタイミングでは死亡保障額の減額を検討することが大事ですが、同時に老後についても考え始める時です。
老後資金は保険だけでなく、貯金や有価証券(株や債券、投資信託)などのバランスを考えましょう。またiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)や、つみたてNISAといった投資優遇制度なども充実しており、それぞれのメリット、デメリットを整理した上で選択しましょう。
定年後
老後資金が準備できていれば、定年後に死亡保障は必要ありません。自分が亡くなって必要となる出費は葬儀費用ぐらいですから、100万円から200万円の貯蓄を準備しておけばいいでしょう。ただし、高齢になるにつれて入院や手術のリスクは上がるため、医療費は保険や貯蓄などで準備しておきましょう。
保険で必要最低限な保障を準備するポイント
保険の目的と、ライフステージごとに必要な保険の種類を紹介してきましたが、ここからは保険で必要最低限な保障を準備するポイントを見ていきましょう。
現在加入している保険の保障内容を確認する
まずは現在加入している保険の見直しです。保険を契約したときに保険会社から交付された「保険証券」などで、保障内容や給付金額などを確認します。終身保障と思っていたのに80歳までしか保障されないなど、期待していた内容と実際の保障内容が異なることはよくあります。
不要な特約は解約
保険にはさまざまな特約が付いているものがありますが、そもそも必要のない特約はもちろん、他の保険と重複している特約も解約しましょう。
例えば、もっとも多いのは死亡保険に医療特約が付いているパターンです。他の医療保険に加入し、その保障が充分であれば、死亡保険の医療特約は必要ないので解約してもいいでしょう。
保障内容が現状に即しているか確認する
保障内容が理解できたら、その内容で過不足がないか確認します。10年、20年前に契約した内容であれば、当時は問題がなくても現状に合わなくなっているかもしれません。
例えば、日本人の平均寿命は男女ともに20年前と比べ3~4年伸びています。つまり、人間の一生にかかる生活費は20年前より4年分多く必要になっています。年間の生活費が300万円掛かるとしたら、1,200万円の追加負担が増える計算になります。こうして数字で確認すると無視できない金額です。
また、医療の進歩により、平均の入院日数は年々短くなっています。今後も入院日数が短くなり、通院による治療が主になっていくようなら、医療保険は、入院給付金よりも通院給付金、または手術一時金などの一時金を中心に考える必要があるかもしれません。
必要な保障を知り、優先順位をつける
本当に必要な保険を知るには「自分の力ではどうしようもないリスク」を考えることが大切です。極端に言えば、貯蓄が数億円ある人なら、突然入院しても「自分の力ではどうしようもない」とはならないでしょう。
世の中にはさまざまなリスクがありますが、そのすべてに備えることは不可能です。また、収入に限りがある以上、あらゆる保険に加入することもできません。
大切なのは、万が一のとき、自分ではどうしようもないリスクを考えて、自分に必要な保障を知ることです。必要な保障がわかれば、それらに優先順位をつけましょう。保険料が今の生活を圧迫しない範囲で、優先順位が高いものから保険で備えるようにします。
ライフステージの変化に伴い定期的に見直す
一度決めた保険が一生ベストな保険ではありません。前述したように、ライフステージによって必要な保険は変化します。結婚、出産、子どもの独立、家の購入など、大きなイベントがあったときは忘れずに必要な保険も見直しましょう。
保険と貯蓄は分けて考える
保険にはいわゆる「掛け捨て型」と「貯蓄型」があります。掛け捨て型だと払った保険料が返ってこないので損だと思うかもしれませんが、保険の元来の目的は、「起こる可能性は低いが、万が一起こった場合の被害が大きいリスク」に備えることにあります。何も起こらなければ安心料を払ったと思って割り切ることも大切です。
貯蓄型の保険は「万が一の時の備え+貯蓄」の機能を備えた保険商品ですが、掛け捨て型に比べ保険料は高額になりますし、解約する時期によっては解約返戻金が大幅に減る、あるいは受け取れないこともあります。
つまり、保険を使って貯蓄をする必要性はありません。いったん保険と貯蓄は分けて考え、貯蓄は他のさまざまな方法と比較しましょう。
保険で備えるのは万が一のケース。ライフステージに合わせて保障を変えよう
保険の役割は、万が一の時自分の力ではどうしようもない事態に備えることです。人生で起こるあらゆるリスクに備える必要はなく、保険料は本来の目的に沿った最低限の保険に払うようにしましょう。
最近では、AIを活用してライフステージ・年代に合わせた最適な保険を提案してくれるサービスも登場してきました。
例えばドコモが提供している「AIほけん」では、保険選びに迷っている人でも、スマホでいくつかの簡単な質問に答えるだけで、自分にあった保険を紹介してくれます。日中忙しい人や対面が苦手な人でもオンライン上でサービス内容の確認や契約を済ませることができるため、まずは気軽に情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は2021年2月17日時点の内容であり、将来の商品改定によっては内容が変更になる可能性がございます。