保険の基礎知識
第3の保険「少額短期保険」とは。ペット・認知症・日帰り旅行の補償も
少額短期保険というとあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、実は身近に起こるさまざまなトラブルを補償してくれる保険で、その種類は多岐に渡ります。実際にどのような保険なのか、具体的なシチュエーション別に確認していきましょう。
少額短期保険(ミニ保険)とは
少額短期保険(ミニ保険)とは、名前のとおり保険金額が比較的少額で、保険期間も短い保険のことです。通常の生命保険や医療保険などに比べて小規模の業者がそれぞれオリジナルの保険を多数展開しており、「こんなことも補償の対象になるの!?」というような一風変わった保険もたくさんあります。
少額短期保険の期間と金額
少額短期保険として提供されているのは、以下のルールを両方満たした保険だけです。
保険金額(少額)
保険分野 | 保険金額の上限 |
---|---|
病気が原因の重度障害・死亡 | 300万円 |
ケガが原因の重度障害・死亡 | 600万円 |
病気・ケガが原因の入院給付金など(医療保険) | 80万円 |
損害保険 | 1,000万円 |
保険期間(短期)
保険種類 | 保険期間の上限 |
---|---|
生命保険・医療保険 | 1年 |
損害保険 | 2年 |
いろいろある少額短期保険の種類
少額短期保険には、一般的な生命保険、医療保険、火災保険などおなじみの保険もありますが、以下のような珍しい保険もたくさんあります。
持病などがあっても入れる保険
すでに糖尿病を発症して治療中の方でも入れる糖尿病専用保険、普通の保険には加入しにくい知的障害や発達障害をお持ちの方でも入れる保険、妊娠中でも入れてその妊娠に伴う入院や帝王切開も保険金の対象になる保険などがあります。
通常の保険には入れない、または入れても保険金の対象外になってしまうような健康状態の方でも、少額短期保険であれば自分に合った保険が見つかるかもしれません。
認知症や介護状態になった時のために
公的な介護保険制度や貯金だけでは心もとないという方には、認知症や要介護状態と診断されたときに一時金が受け取れる保険があります。家族に面倒をかけないように自分で加入しておくタイプだけでなく、親の介護に備えて子どもが加入しておくタイプもありますよ。
お葬式に備える
自分が亡くなった後のお葬式代、墓石代、遺品整理代などを残すための保険です。葬儀保険や終活保険といった名前で販売されていることが多いです。なかにはお葬式に参列した人がケガをしたときの保険など、かなりピンポイントなものもあります。
愛するペットのために
ペットは人間と違い、病院にかかることになっても医療費が3割負担で済むような制度がないため、一度ケガや病気をしただけで一気に数十万円かかることもあります。ペット保険はそんなときに役立ちます。
お出かけが好きな方にも
1日単位で加入できて旅先での病気やケガに備えられる旅行保険、旅行先で雨が降ったときに旅行代金が還元される天気保険、山で遭難してしまったときの捜索や救助費用に備える保険、楽しみにしていたイベントに行けなくなってしまったときのチケット代を補償する保険などがあります。
日常のトラブルにも役立つ
自転車でケガをしたり人をケガさせたりしたときの保険、バイクや自転車が盗難にあった時の保険、スマホが水濡れしたり画面が割れたりしてしまったときのスマホ保険、法的トラブルに巻き込まれたときの弁護士保険などがあります。
そのほかにも不妊治療に備える保険、外国人向け保険、高齢者施設に入居している方専用の保険など、例を挙げればキリがないほどさまざまな保険が用意されています。
少額短期保険のメリットとデメリット
少額短期保険のメリットは、ターゲットを絞ったユニークな保険の中から、自分に合ったものを選ぶことができる点にあります。保険金額が少額なため保険料も手ごろで、インターネット上の手続きだけで簡単に加入できるものも多くなっています。すでに自分が加入している保険に、必要とする補償を必要な期間だけプラスして入っておくといった柔軟な使い方も気軽にできるのもメリットですね。
ただその一方で、いくつか注意しておきたい点もあります。保険料が掛け捨てで毎年更新するたびに上がっていくものも多いため、加入前によく確認することが必要です。また、少額短期保険の保険料は生命保険料控除の対象にならないのでご注意ください。
さらに、保険会社であれば倒産した場合でも加入した保険を無にしないための契約者保護制度がありますが、少額短期保険を提供する業者にはありません。保険料が数百円くらいの保険を選んだ場合にはあまりこうした点は気にならないかもしれませんが、念のため覚えておくとよいでしょう。
賢く使って安心を手に入れよう
少額短期保険は「少額」と名が付くとはいえ、うまく使えばもしものときに強い味方になってくれます。気になる保険が見つかったら、まず補償内容と保険料をチェックしてみましょう。もし貯金でカバーできるくらいの少額の補償であれば、わざわざ保険料を支払って加入するまでもないかもしれません。自分の置かれた状況も踏まえて、費用に見合った効果が得られそうか判断したいところです。
※本記事は2020年9月1日時点の内容であり、将来の商品改定等によっては内容が変更になる可能性がございます。
文・馬場愛梨(ばばえりFP事務所 代表)
提供・fuelle